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頭の中に突然って書くと少し大げさかもしれない。
でも、かなり俊敏に正確にギターのリフレインが両耳の間をラリーしだして、
思わずバイクを山手通りの路肩に止めた。
お得意先にランチを届けた後だったので、一服がてら、
車道と歩道の狭間にその土台となるリズムを探した。
鼻歌でベースとドラムを確認してみると、もう出来上がってる。
完璧なアレンジが俺の頭の中で足踏みしている。
いつも以上に長く感じるアルバイトを終え帰宅し、
8トラックのMTRの録音ボタンを押し、昼間のリフレインの構築を始める。
数時間続いた興奮状態の後の俺の結論は「歌は要らない」。
ふと目に入る机上のメモ帳に「FASHION MONSTER」とある。
これだ。

それが10年前のある一日の出来事だ。
それまでの音楽活動の中で挑戦しなかった
「自分の頭の中で鳴り始めた音を表現していく」事をやっていきたい。
そう決意した夜明け前だった。
思えばその日がnilの始まりだったか。
それから色んな出会いがあった。
もう思い出せない別れもきっと。
どちらが多いか。今は考えず。
最近の重要な出会いは「ワカンタンカ」って言葉。
日本語に訳すと「大いなる意思」だが、「八百万の神」かも知れない。
インディアンと呼ばれ自分達の大地を盗まれた勇者達の言葉だ。
いくつかの文献に触れ、感じ、その時書いた曲のタイトルに拝借した。
でも俺が気に入ったのは英語訳の「THE GREAT SPIRITS」。
そのままの響き「THE GREAT SPIRITS」。
日本語にすると「ザ・グレイト・スピリッツ」。
今回レコーディングしたnilの再録音ベスト盤であり、
4枚目のフルアルバムにその名を冠した。
あの瞬間からの10年間に名前を付けるとして、これ以上のものはないと。

この10年間で出会った全ての人々へ、感謝と共に伝えたい。
あの日録音ボタンを押した8トラックの宇宙は今、こんなにも輝いている。
そしてnilをずっと支えてくれてるみんなに、これから出会い別れるみんなに、
この「THE GREAT SPIRITS」を捧げる。
あの日の夜明けと今日の夜明け。
何の違いもない。
旅はまだ始まったばかりのようだ。



                      2008/03/05
                    高野 哲 from nil。